南信州阿南町新野地区に室町時代から、約500年間守り続けてきた国重要無形民俗文化財の「新野の盆踊り」。
今年は、公式の盆踊りは新型コロナウィルスの影響で中止となりましたが、実は伝統の灯を消してはいけないと有志が結集。今年、お亡くなりになった新盆(しんぼん)の仏様のためにも、伝統継承のためにも有志が集まって、プライベート盆踊りは行っていたのです。こんな時、肉声だけでできる新野の盆踊りはいいですね。人が集まれば輪ができて、自然と盆歌が出るのです。
まずは、自分の家の前で家族で踊ってみました。すると、ご近所の皆さんが集まってきて、自然と輪ができました。こういうのも、とってもいいものです。これこそ自分のご先祖様への供養です。普段、会場まで行けないおじいちゃん、おばあちゃん、生まれたての赤ちゃんを抱いた若夫婦も参加でき、とても喜ばれました。
次は会場を移動。いつもの本町通りは占有できないので、シイタケ問屋のフルタヤさんのご厚意で駐車場を貸していただきました。場所は最高!盆踊りの神様「市神様」の真ん前です。いつもなら櫓を組み、マイクとアンプで拡声するのですが、昔ながらの肉声の音頭取り。これもなかなかいいですね。ソーシャルディスタンスをとり、椅子を置いて人と人が近づかないように気を付けて行いました。
ご近所の迷惑にならないように21時~0時までの縮小版で行われました。何もアナウンスしていないのに、若者が数名合流。やっぱり家にはいられないのが新野のお盆。3時間だけでも14日、15日、16日と踊りました。ソーシャルディスタンスをとっての盆踊りです。また、お盆前2週間は、感染地域へは行っていない方だけ、参加してもらいました。
15日の深夜16日に日が変わるときには、各家の仏様をあの世へお送りします。「また、来年来てくださいね。」「私たちをお守りください。」と祈りながら家族で近くの川へ送りに行きました。
17日朝には、新盆の仏様を、親族と音頭取り、地区住民で送りました。神事と仏様をあの世に送るための特別な踊り「能登」だけが行われました。まずは、市神様の神事です。
次に砂田の御太子様へ行きます。いつもと違って1列で向かいました。
お太子様から戻ると、小さな輪で「能登」が踊られていました。しかし、ソーシャルディスタンスを保った「能登」です。美しい「能登」です。もちろんスクラムはありません。
昔はこのようにスクラムを組まないで「能登」を踊っていたそうです。おかげで子どもたちも安心して踊れました。
新野小学校と阿南第二中学校の子どもたちも参加して、神送りを盛り上げてくれました。うれしかったですね。次世代へ続く希望です。
鐘を鳴らしながら行者を先頭に、灯篭の行列が来ると、整然と能登を止めていました。行列の進むのが早いこと早いこと!
交通安全協会の方々や駐在所の警察官もいないので、心配しましたが、皆さん白線からはみ出さないように整然と歩いてくれて、安心しました。ありがたいです。
あっという間に神送りの会場、瑞光院下の十王堂広場に到着。
新盆の灯篭がつぶされ、積み重ねられていきます。まるで、亡くなった方への未練を断ち切るかの如く、容赦なくきれいな灯篭がつぶされます。
そして、点火と共に、花火が一発打ち上げられ、東の空に向かって踊り神様と新盆の仏様が送られました。
「秋歌」を歌いながら、家に着くまで後ろを振り返ることなく、全員が歩いていきました。
コロナ禍でありながら、できる限りのことをやって、室町時代以来の500年の伝統を途絶えさせないように取り組んだ、新野高原盆踊りワークショップ実行委員を中心とした有志の皆さん。会場をお貸し頂いたシイタケ問屋フルタヤさん、ご参加いただいたすべての皆様に感謝申し上げます。そして、来年はコロナウィルス感染防止をしたうえで、全国の新野の盆踊りファンの皆様にも是非ご来場いただき、普通に開催できるよう知恵を絞って、準備してまいります。ご支援よろしくお願いいたします。